昭和五十四年のサンライズ作品「科学冒険隊タンサー5」#11「月面の古代メカ 空飛ぶ竜戦車」と、五十六年の東映まんがまつりの一本「仮面ライダースーパー1」は同一世界の出来事であり、前者に登場する竜戦車と後者に登場する火の車は共に殷王朝の兵器である。
本稿では作品内の呼称に従って、商ではなく殷と表記する。
「タンサー5」では、一九九九年の月面調査隊が月面で、空飛ぶ円盤型の胴体に竜の首と尾、無限軌道を備えた青銅の竜戦車の攻撃を受ける。月面からの連絡を受けたタンサー5は、竜戦車が中国大陸山東省の画像石や古代殷王朝のユオウ(恐らく殷王朝初代の
正確な年代は判明していないが、殷王朝は紀元前十七世紀から同十一世紀まで存続したとされ、まさに竜戦車の時代に当たる。
「スーパー1」では、日本の東北地方のマタギの里・山彦村の守護神とされていた、古代中国の戦車・空飛ぶ火の車をドグマ帝国が手に入れてこれに乗り込み、村や都市を焼き払う。車輪を横にしたような胴体に竜の首と前脚を持つ火の車は、三千年前の古代中国の王が作った物で、山彦村はその王が蛮族を倒して開いたのだと言う。ドグマに操られる火の車はスーパー1や山彦村のマタギの子供達の活躍で破壊される。
周の武王が殷王朝を打倒したのが紀元前十一世紀で、二十世紀の約三千年前であり、火の車の渡来時期と一致する。
竜戦車は目から光線を発射する無人兵器、火の車は口から火炎、両前脚からミサイルを発射する有人兵器と言う違いはあるが、「竜の形をした空飛ぶ円盤」と言う点ではよく似ている。「タンサー5」冒頭で世界の宇宙飛行伝説に触れるくだりに出て来る絵は、竜のような、雲のような空飛ぶ円盤に人が乗っており、また前脚があるので、竜戦車よりも寧ろ火の車に似ている。
史記によれば、殷王朝の最後の王・紂王に迫害された王族・
時間移動で恐竜時代に飛ぶ事もできるタンサー5が三千五百年前の竜戦車の製作者を探査できないとは考えにくい。竜戦車を作ったのが古代中国だと判明、公表すると、月面での事件の責任や補償で面倒な国際問題になりかねないので、上層部からタンサー5に探査中止命令が出ていたのではないか。殷王朝と現代の中華文明の連続性と、台湾と中共の正統争いが絡む。
尚、前述の「タンサー5」の冒頭の絵の、竜の搭乗員の髪型が弁髪だが、弁髪は清王朝即ち滿洲族の習俗であり、中華古来の髪型ではない。また、竜戦車に襲われた村の女性がズボンを穿いていたのも、これもまた北方騎馬民族の衣服・
(平成二十七年二月二十一日)
I use "ルビふりマクロ".