#51「ゴルゴム最期の日」

昭和六十三年十月九日放送 脚本・杉村升 監督・蓑輪雅夫
登場怪人・トゲウオ怪人

粗筋

 キングストーンフラッシュで解放されたバトルホッパーはシャドームーンに襲いかかり、返り討ちに遭うも尚も突進して大爆発。爆発に遭った直後にライダーキックを打ち込まれたシャドームーンを侍女怪人達が退却させる。BLACKはトゲウオ怪人を斃し、サタンサーベルを拾い上げて神殿に乗り込む。瀕死のシャドームーンは無理にシャドーキックを放つも不発、BLACKのサタンサーベルはキングストーンを打つ。倒れ込むシャドームーン。BLACKは奥殿に突入、サタンサーベルを創世王に投げ付ける。大爆発を起こす創世王、神殿は崩壊。BLACKはシャドームーンを救出できぬまま脱出する。
 雨中、川岸に立ち尽くす光太郎。宙に放擲されたサタンサーベルは消滅。大雨は十日も続き、そして地球に平和が戻る。
 旧キャピトラ跡、そこで光太郎は独り回想に耽る。そしていずこへともなく走り去る。

暗黒大公曰く

 さあ、遂に来た本編最終回、悪の神話の終焉。物語自体は光太郎とゴルゴムのみで進み、もうキャピトラ組は絡んで来ない。
 ライダーキックを受けて転がるシャドームーンに駆け寄る侍女怪人達、そしてシャドームーンを二人掛かりで押さえ付けて退却させる。彼女達が腰元らしい働きを見せたのはこれくらいではないかと思う。口をきかない彼女達だが、もしきけたら「殿、なりませぬ!」等と言ったのかも知れぬ。
 ゴルゴム本拠地の入り口から神殿まで、BLACKの侵入を妨げた者がいた様子は無い。組織の心臓部に最強の敵が入り込んでも最早立ち向かう者も無いゴルゴム。サタンサーベルを守っていた亡者共はどこへ行ってしまったのか。
 前回、もう迷いを振り切って打倒シャドームーンを決意したはずのBLACKだが、乗り込んだ先の神殿でシャドームーンの姿を見ると「信彦」。そして決着をつけた後でもまた「信彦」。しつこく翻意を促し、シャドーキック発射をやめさせようとする。そしてキックに失敗してよろめくのを助け起こし、サタンサーベルを拾ってやる。BLACKの方でもシャドームーンに対する態度にぶれが見られないこともない。
 それでシャドームーンの方でも「お前は一生苦しむことになるんだ、親友を、この信彦を抹殺したんだからな、一生後悔して生きていくんだ、ははは…」もうこうなると信彦自身がヤケクソで叫んでいるとしか思えない。やはり信彦の自我は残っていたのか、信彦が主体的にシャドームーンとなることを受け入れていたのか。復活以後の数々の悪事が信彦自身の意志によるものなら、果たして光太郎は信彦を許すことができるのか、それでも尚「ゴルゴムの操り人形」だったと被害者扱いするのか。「悪」の張本人が創世王であることは間違いないのだが、やはりシャドームーン、信彦の「罪の意識」も気になる。
 シャドームーンが斃れるとすかさずBLACKに王位継承を求める創世王、どこまでも狡猾な老帝王。当然BLACKが拒否すると今度は地球を人質に取ってBLACKを脅迫、何ともしぶとい。「飛び込むぞ!」これぞ創世王最高の名台詞である。
 「私は必ず甦る、人間の心に悪がある限り必ず甦る、忘れるな!」そして神殿大崩壊。そのBGMはV7a、後半の三拍子が物悲しく流れる。この「邪悪の神殿」、前半のオルガンは剣聖のテーマとしておなじみだが、後半のピアノと弦楽器の部分は滅びゆくゴルゴムの葬送曲だったのか。これで剣聖、三大怪人、そして神殿大崩壊と、ゴルゴム大幹部の、そしてゴルゴム自体の最期の場面には全てV7aが使われた格好である。実にゴルゴムを象徴していた曲であった。
 やはり今回の名場面は、豪雨の中に立ち尽くし、そしてサタンサーベルを放擲する光太郎だ。確かに光太郎は、BLACKはゴルゴムを斃した。ゴルゴムを斃して全宇宙をその魔手から救い、地球に平和を取り戻した。しかしながら彼は哀しかった、遂に信彦救出には失敗し、そして親しかった人々全てを失ってしまったのだから。ゴルゴムには勝った、その点では彼は勝利者である。しかし信彦救出失敗の点で彼もまた敗者であろう。誰に敗れたのか、それはこの非情な宿命とでも言えばいいのか。宿敵撃滅でも万々歳とは言えない、何とも悲惨な結末である。
 一時期、テレビ特撮の最終回ではやたら「友情」だの「皆の力」だの「光」だのというのが流行ったが、この「BLACK」についてはおよそそれらとは対極に位置するものと言えよう。確かに少年戦士達や滝竜介、クジラ怪人、そしてキャピトラ組等、彼の戦いを支える人々は少なからずいた。そして世間からの声援を受けていたことは確かだ。しかしながら最終決戦では誰の応援も受けず、誰も知らない神殿の中でただ一人戦った。BLACKがシャドームーンを斃したことを直接的に知る者はいない。そして悪の根源・創世王に至っては、ゴルゴム構成員でなければその存在すら知る者はいないだろう。暗い暗い闇の中での、誰にも称賛されることの無い勝利。忌まわしき闇の中から生まれた黒き戦士の栄光無き勝利!
 神殿大崩壊、これでシャドームーンも侍女怪人達も下敷きになってしまった。恐らく、地下に眠っていたその他の怪人達も全滅だろう。大宮会長や坂田代議士はどうなったのか。近しい関係者が彼等とゴルゴムの関係を暴露すれば社会的信用は失墜、政治生命も終わりだ。
 旧キャピトラでの光太郎、ここでまた挿入歌や主題歌に乗せて長々と回想場面。#48のと重複している場面が多々ある。運動場で光太郎と信彦がサッカーの練習をする場面は特番と#1で既に使われているが、そこにキャピトラ組が笑顔で駆けて来るのは今回が初使用だと思う。だから今回は直接出演はしていないのにクレジットにはキャピトラ組の名前があるのだろうか。また、神殿でのシャドームーン復活や少年戦士の訓練、キャピトラ組の花束のように、現場にBLACKは居合わせていない場面がある。「さよなら、みんな、楽しい思い出」劇中の光太郎の最後の台詞がこれだ、あまりにも悲しすぎる。
 創世王は、自らの寿命が尽きる前に王位継承を済ませないとシャドームーンの命も無いと言っていた。けれども、王位継承を蹴った世紀王ブラックサンはゴルゴム崩壊後も生きながらえた様子である。「世紀王が王位継承を拒否したらどうなるか」等ということは前代未聞で創世王自身も知らず、ただ自身の死期が近付いているのは解っていたから斯くの如く急き立てたと思われる。もし、ゴルゴムを斃したBLACKもまた力尽き、その死を暗示するような結末だったらそれもそれでまた凄まじかっただろう、「鉄人タイガーセブン」そのまんまだけれど。
 光太郎が走り去るラストには「おわり」表示は無く、当時の新聞テレビ欄でも今週、次週とも「終」記号は無い。そして新番組が始まってもテレビ欄では「仮面ライダーブラック」のままであり、提供クレジットの後も「仮面ライダーBLACK/終」であった。もしテレビ欄の文字でしかこの作品を知らない人がいたら、「ブラック」が二年間も続いたと思ったかも知れない。言うまでもないが昭和六十三年十月二十三日に放送されたのは「BLACK」#53ではない。
 戦いは終わった。

クレジット

オープニング

仮面ライダーBLACK         吉川 進         堀 長文          (東映) プロデューサー         井口 亮         山田尚良         (毎日放送) 原作 石森章太郎    少年サンデー    てれびくん 連載 コロコロコミック    小学館学習雑誌    テレビランド 脚本 杉山 升 音楽 川村栄二     主題歌 「仮面ライダー  「LONG LONG AGO, ・   BLACK」  20TH CENTURY」   作詩 阿木燿子   作曲 宇崎竜童   編曲 川村栄二   歌 倉田てつを 歌 坂井紀雄     (コロムビアレコードCK‐797) 南 光太郎 仮面ライダーBLACK  倉田てつを 秋月杏子  井上明美 紀田克美  田口あゆみ 坂田佳枝 神田真理 岡元次郎 北村隆幸 飯田則子 末永貴久 菊地寿幸 (ジャパン・アクション・クラブ) アクション監督  金田 治   (ジャパン・アクション・クラブ)
ナレーター 政宗一成 創世王   渡部 猛 監督  蓑輪雅夫

エンディング

撮 影 工藤矩雄 照 明 渡辺 康 美 術 稲野 実 造 型 前澤 範 録 音 太田克己 編 集 菅野順吉 選 曲 茶畑三男 効 果 大泉音映
製作担当 寺崎英世 進行主任 千葉耕蔵 助監督 関 良平 計 測 山本英夫 記 録 斉藤能子 製作デスク 岩永恭一郎 装 置 東映美術センター 操 演 国米修市 美 粧 サン・メイク 衣 裳 東京衣裳 装 飾 大晃商会 資料担当 小佐野 聡      (石森プロ) キャラクター製作 レインボー造型企画 イラスト 野口 竜 プロデューサー補 高寺成紀 合 成 チャンネル16 現 像 東映化学 オートバイ協力   S SUZUKI
ビデオ合成 東通ECGシステム   峰沢和夫 近藤弘志   前岡良徹 鈴木康夫 (株)特撮研究所 操 演 鈴木 昶     尾上克郎 撮 影 高橋政千 照 明 加藤純弘 美 術 佛田 洋 特撮監督  矢島信男     △東映 製 作     毎日放送

使用音楽一覧
場面番号または歌曲名音楽メニュー
前回の粗筋「BLACK ACTION」カラオケ
副題M48b別サブタイトル
バトルホッパーの涙V1aT2燃える想い
バトルホッパー反撃「ブラックホール・メッセージ」
インストゥルメンタル
バトルホッパー戦死V2勇者は行く
シャドーキック「LONG LONG AGO,20TH CENTURY」
つかの間の反撃M15冒頭のみ怪人出現
敗戦の辞M13
奥殿へのいざなM34uptempo迫りくる怪人
死期近き創世王M22大いなる悪の力
最後の戦いV8絶体絶命!
ゴルゴムの最期、光太郎の叫びV7aT5邪悪の神殿
孤独な光太郎、苦楽の回想「仮面ライダーBLACK〜星のララバイ〜」
回想は続く「仮面ライダーBLACK」
まだまだ回想「オレの青春」
しつこく回想「ゴールへ向かって走れ」
また会おう!V0ヒーロー登場
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