#23「マルモの魔法の力」

昭和六十三年三月十三日放送 脚本・鷺山京子 監督・蔦林淳望
登場怪人・アンモナイト怪人

粗筋

 アンモナイト怪人、初戦でBLACKに二つの頭のうちの一つ、念動力の脳を吹っ飛ばされて退却。大神官達に叱責されたアンモナイト怪人は剣聖から与えられた兜を着用してもう一つの頭を取り返すべく再出陣する。
 飛ばされた頭は地面に落下、おとなしいアンモナイトとなる。それを少年・茂が拾い上げ、マルモと命名。
 偶然茂と知り合った光太郎は茂にマルモの引き渡しを要求するも茂はこれを拒否。そこへ剣聖とアンモナイト怪人出現、剣聖はマルモを奪還してこれをアンモナイト怪人に与える。再び二つの脳を得たアンモナイト怪人はBLACKと戦うもまた頭を吹っ飛ばされて今度は本体爆発。吹っ飛んだ頭は再びマルモの姿となるが、やがて茂の眼前で光となって消滅する。

暗黒大公曰く

 今回の放送の前日に劇場版第一作公開。物語の進行の上では重要ではないが、童話風味が心に残る一本。
 冒頭、酔っ払いのお父っつぁんの自転車を念動力で操って、そのお父っつぁんを追いかけ回すアンモナイト怪人。それを神殿でバラオム評して曰く「見事だ」。あの程度のことで見事なんて言うなよ、褒めるならきちんと戦果を挙げてからにすべし、そんな調子だからアンモナイト怪人すっかりいい気になって、「町を混乱に陥れる」程度でBLACKに頭を吹っ飛ばされてしまうのだろうが。「何という失態だ」「生きて逃げ帰ってくるとは」「怪人の面汚し」評価逆転。
 敗戦アンモナイト怪人を囲んでのゴルゴム大幹部達の会話を聞いた限りでは、同怪人の「二つの脳」についてビシュムは知らなかったか忘れていたようだ。
 椅子や本が乱舞する教室、「ぬ〜べ〜」かと思った。
 このアンモナイト怪人、ゴルゴムで最も気持ち悪い怪人だと思う。左右非対称の体、ぬめりを感じさせる体色、無数に生えた触手、そして二つの頭部。クワゴ怪人も気持ち悪い、しかしあれはまだ乾いた感じがするから少しはマシだと思うが、これはもう着ぐるみにも触りたくない。少なくとも、念動力の脳を失った状態での声は明らかに西尾徳だ、「俺の頭はどこだ」
 アンモナイト自体は中生代の生物、人類とは直接の接触は無いはず。既に滅んだアンモナイトの、生き延びている人類に対しての怨念がアンモナイト怪人の力なのだという。要するに人類への嫉妬か、別に人類がアンモナイトを滅ぼしたわけではないから。果たしてゴルゴムは化石をも怪人の材料にできるのか、それとも中生代からゴルゴムは存在するのか。化石から怪人を作る技術があるのなら、東映映画「北京原人」の生命科学研究所はゴルゴム系列かも知れない。
 紙の箱に空気穴を開けてマルモをしまっておいた茂、その母はそれを見つけて開いてみてお約束の悲鳴。確かにあんなもの見れば大抵の人は驚くだろう。そして彼女には「気持ち悪い変な虫」程度にしか見えなかったのだろう。母に恨み言を言った茂に反応して、マルモは掃除機を動かして母の足に引っかけて見事にこれを転ばせる。ささやかな復讐だ。
 Aパート最後の方でマルモが茂の希望に応じておやつを出す場面は「元祖『たこ焼き食べたい』」と呼んでやろう(ラジメニアン限定ネタ)。
 せっかくゴルゴムから解放されたマルモを救えなかったBLACKの悔恨。しかしあの奇怪な姿のマルモ、茂の家にすらいられなかったのに一般社会の中で生きていけるのか? 光太郎が茂を慰めて曰く、天国でマルモは多くの仲間達と友達になっているだろうと。犬や猫と戯れるアンモナイト、想像するとこれも気持ち悪い。ただ、マルモが凶暴なアンモナイト怪人の頭として爆発したのではなく、心優しいマルモ一個体として茂に看取られつつ消滅したのはマルモにとっても茂にとっても、せめてもの救いだと思う。
 結局アンモナイト怪人のマルモ脳の有無は念動力と格闘戦の二刀流になるか格闘専門になるかの違いであって、総合的な戦闘能力の優劣はあまり無いようにも思える。
 この辺りの回では、変身場面の音楽は挿入歌「ブラックホール・メッセージ」か「変身!ライダーブラック」のようだ。
 今回のラストのナレーションの一節「憎しみを力に変えて」が大好きな筆者。まさに筆者の人生そのもの、過去、多くの対象への憎悪を原動力として戦ってきた。これからもそうだろう。

クレジット

オープニング

仮面ライダーBLACK         吉川 進         堀 長文          (東映) プロデューサー         井口 亮         山田尚良         (毎日放送) 原作 石森章太郎    少年サンデー    てれびくん 連載 コロコロコミック    小学館学習雑誌    テレビランド 脚本 鷺山京子 音楽 川村栄二     主題歌 「仮面ライダー  「LONG LONG AGO, ・   BLACK」  20TH CENTURY」   作詩 阿木燿子   作曲 宇崎竜童   編曲 川村栄二   歌 倉田てつを 歌 坂井紀雄     (コロムビアレコードCK‐797) 南 光太郎 仮面ライダーBLACK  倉田てつを 秋月杏子  井上明美 紀田克美  田口あゆみ 飯塚洋介 小林美苗 矢田奈緒美 甲斐道夫 岡元次郎 北村隆幸 山本貴浩 末永貴久 渡辺 実 (ジャパン・アクション・クラブ) アクション監督  金田 治  村上 潤   (ジャパン・アクション・クラブ)
ナレーター 小林清志 ダロムの声 飯塚昭三 大神宮ダロム  庄司浩和 大神宮バラオム  高橋利道 剣聖ビルゲニア  吉田 淳 大神官ビシュム  好井ひとみ 監督  蔦林 淳望

エンディング

撮 影 工藤矩雄 照 明 神長倉孝明 美 術 井上 明 イラスト 野口 竜 プロデューサー補 高寺成紀 録 音 太田克己 編 集 菅野順吉 選 曲 茶畑三男 効 果 大泉音映
製作担当 寺崎英世 進行主任 竹内洪太 助監督 蓑輪雅夫 計 測 岡部正治 記 録 高津省子 製作デスク 岩永恭一郎 装 置 東映美術センター 操 演 国米修市 美 粧 サン・メイク 衣 裳 東京衣裳 装 飾 大晃商会 資料担当 小佐野 聡      (石森プロ) キャラクター製作 レインボー造型企画          前澤 範 合 成 チャンネル16 現 像 東映化学 オートバイ協力   S SUZUKI
ビデオ合成 東通ECGシステム   峰沢和夫 近藤弘志   前岡良徹 鈴木康夫 (株)特撮研究所 操 演 鈴木 昶     尾上克郎 撮 影 高橋政千 照 明 加藤純弘 美 術 佛田 洋 特撮監督  矢島信男     △東映 製 作     毎日放送

使用音楽一覧
場面番号または歌曲名音楽メニュー
アンモナイト怪人出現M40挑戦
動き出す自転車M37T2
自転車の襲撃M34おぞましき姿
副題M48b別サブタイトル
アンモナイト怪人の念動力V8絶体絶命!
光太郎対アンモナイト怪人M6悪魔の追撃
BLACK対アンモナイト怪人「ブラックホール・メッセージ」
マルモ登場M31操り人形
茂とマルモM17平和
アンモナイト怪人叱責、剣聖登場M3張りつめる空気
茂の母とマルモM20世紀王脱走
おやつの時間M17平和
「俺の頭はどこだ」M8絶体絶命!
「頭を返せ」M34(uptempo)迫りくる怪人
駆けつける光太郎V6マシン激闘
光太郎とマルモM40挑戦
マルモの忠誠心M19偽りの魂
アンモナイト怪人来襲M15怪人出現
変身、戦闘「変身! ライダーブラック」
剣聖登場V7aT5冒頭のみ邪悪の神殿
BLACK対アンモナイト怪人M24策謀
頭奪還M8絶体絶命!
バトルホッパー、形勢逆転「仮面ライダーBLACK」
勝利M9凱歌
マルモの最期MF
「仮面ライダーBLACK 〜星のララバイ〜」
インストゥルメンタル
茂、光太郎とキャピトラ組「ブラックホール・メッセージ」
冒頭とコーダのみ
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