ユキト〜法術の闘牌編〜


 ここはとある海辺の田舎町の雀荘。この何の変哲も無い街で、4人の少女達が死闘を繰り広げていた。
「ロン。メンタンピンドラ2…、満貫っ」
「困りました…後は下着を残すのみです…。お米券で許してもらえないでしょうか?」
「お米はかなり嫌いじゃない…」
「あははーっ、そんなの認められませんよ〜。脱衣麻雀なんですから最後まで脱がないと〜」
「佐祐理がそう言うのなら…」
「残念…がっくし…」
 少女達の名は、「川澄舞(かわすみまい)」、「倉田佐祐理(くらたさゆり)」、「神尾観鈴(かみおみすず)」、「遠野美凪(とおのみなぎ)」。そして今正に、美凪という少女は窮地に立たされている。事態を打開しようと美凪はお米券で交渉に出る。それにより、アがった舞と交渉成立に成ろうとした刹那、相方である佐祐理に差し止められる。交渉が決裂し、美凪はおぼつかない手付きで自分の胸元からブラを外す。女同士でも恥ずかしいのだろうか、外気にさらされた美凪の胸元は徐々に赤く染まっていく。
「私より大きい…」
とパンティー1枚になった美凪を見て、感嘆と羨望の念を込め、観鈴が呟く。
「ふえ〜っ…本当に大きいですね〜。舞とどちらが大きいか揉み比べて見たいですね〜」
「ぽかっ」
とすかさず舞が佐祐理にツッコミを入れる。
「あはは〜、舞〜冗談ですよ〜。でも、美凪さんが次回佐祐理に振り込んだ時はそれで許して上げますよ〜」
「それはそれで困ります…。初めては男性の方と決めていたので…」
 辺りを覆う闇はさらに深みを増し、開始直後から振り続いていた雨は止むのを忘れ、その勢いは激しさを増していた。そんな中、不意にドアが開く音が聞こえた。
「誰だっ!」
 そう言い、舞は何故か腰に掲げていた剣をドアに向かい投げつける。
「危ない、いきなり何を投げつけるんだっ!」
 ドアの奥から現れた者。年は20代前半、白髪に鋭い目付き、全身黒づくめの男だった。
「ちっす…」
とその男に、あたかも旧知の知り合いに会ったかのような挨拶をする美凪。男は男で美凪の突然の動作に驚き、困惑している。
「ようやく、真打の登場です。実は私はこの方の代打ちだったのです」
 そう言い、男に近づく美凪。
「えっ!?俺はただ、この辺りを通りかかっただけで、雨宿りに…、ぶっ!」
 とっさに関係を否定しようとする男。しかし、パンティー1枚の美凪が突然抱き付き、言葉を失う。
「…麻雀で負けそうで困っているのです。もし本当に私の代打ちをして下さるのなら、後でお米券を好きなだけ進呈しますので…」
と抱き付きながら男に耳打ちする美凪。
「代打ちをしてくれたら、好きなだけ手篭めに…ぐはっ!!」
 Tシャツ一枚越しに伝わってくる美凪の胸の柔らかさに感化され、男はお米券を手篭めと勘違いしてしまう。手篭めにしているシーンを想像し、エヴァ初号機が頭にサキエルの光のパイルの直撃を受けた時の、流血音に酷似した音で、鼻から血を流す。
「あの…大丈夫ですか?それにさっきから下半身の辺りが熱くて硬くなっていますが…」
「それは男の性(さが)だ…。…それよりも代打ちをすればいいんだな…?」
「やってくれるのですか?」
「そんなに美味しい条件を突き出されて、引き下がる男が何処にいると思う?」
「ありがとうございます…」
(ククク…、手篭め♪手篭め♪ぐはっ、また鼻血が…)
 だが、その男はお米券を手篭めと勘違いしたままだった…。


「…という訳だ。俺が来たからには今までのようにはいかないぜ!」
「あはは〜っ、道理で美凪さんが手応えがないと思いましたら、そういう事だったのですね〜。ところで貴方のお名前は?」
「俺は国崎往人(くにさきゆきと)だ」
「ゆきと…。不思議と何処かで聞いたような名前ですね…。まあ、いいですわ。では今からこの脱衣麻雀のルールを説明しますね」
と、脱衣麻雀のルールを説明する佐祐理。この脱衣麻雀は点棒は使用せず、振り込んだ時は、変わりに服を脱ぐ。脱ぐ枚数は役の強さによって違い、満貫までが1枚、ハネ満〜3倍満が2枚、役満は着ている枚数に関わらず、全部脱がなければならない。また、自模アがりは役満を除き、役の強さに関係なく、他家をそれぞれ1枚ずつ脱がせられる。役満自模の場合、任意の人を全裸、ダブル役満の場合は任意の2人、トリプルなら、全員を全裸にする事が出来る。そしてアがった者はその服をもらい受ける事が出来、自分が振り込んだ時には服を脱がず、そのもらい受けた服を差し出せば良い。無論、脱いだ服は試合後、本人に返される。このルールで誰かが全裸になるまで続けられる。尚、点棒の変わりに服を払うという性質上、短期決戦になる可能性があり、鳴きは全面的に禁止である。
「ククク…、成程、ようは役満をアがって、誰か1人を全裸にすれば勝負は終わるという事だな」
「早い話、そういう事です。アがれればの話ですけど…」
(田舎の雀荘らしく、全自動ではないな…。ククク…、もっともその方が俺にとってはやり易いがな…)
「では、往人さんが次の親です」
「分かった…(ククク…、これで勝負はもう決まったようなものだな…)」
 そして洗牌が始まった…。
(秘技!法術洗牌っ!!)
 法術洗牌、それは往人の法術イカサマ技の一つで、普通に手を使い洗牌をしている間、法術を使い任意の牌を自分の手元に集める技である。手は普通に洗牌をしているだけなので、イカサマとはまず気付かれない。気付くのは恐らく、鬼神赤木しげる位だろう。
(積み込み完了…。後は…)
 そう呟き、往人はサイを振る。
(秘技!法術サイ振りっ!!)
 法術サイ振り、それは法術により任意の目を出す技である。
「カンッ!!」
 開始直後、往人はいきなりカンを宣言する。ちなみに暗カンは認められている。
『ドラ4ッ!?』
 往人が倒した牌に誰もが驚愕する。往人が倒した暗カンがドラだったからである。
(これで、ドラ4確定…。後は…)
「カンッ!!」
 王牌を引き、またもやカンを宣言する。
『なっ!?ドラ8ッ!!?』
 今度は倒した牌全てが新ドラとなる。
(…この男ドラ爆…?)
(…いいえ、舞。洗牌に特に不審な動きはなかったわ…)
 心と目で会話をする、舞と佐祐理。この二人、そこそこの腕を持つコンビ打ちであるが、流石に往人の法術には気付かなかった。
「(これでドラ8…。他の山から引いた牌も申し分無い…。ククク…、正に僥倖っ!!)リーチッ!!」
「いきなり、リーチ…。観鈴ちん、大ぴんち。この牌通るかな…」
「ロンッ!リーチ一発ドラ8、そして…ククク、裏ドラ8!数え約役満っ!!」
「が、がお…、数え役満…。観鈴ちん、絶体絶命大ぴんち〜」
「さあ、大人しく裸になってもらおうか、嬢ちゃん!!」
と、観鈴に迫る往人は変態親父そのものであった。
「がお…、どうしてそんな事言うかな〜…」
と涙目になりながらも渋々服を脱ぎ出す観鈴。
(佐祐理…やっぱりこの男…)
(ええ、やはり玄人ですわ…。それもかなりの…)
と心と目で会話をし、往人に対する警戒心を高める舞と佐祐理。一方、観鈴は制服を脱ぎ終わり、ブラジャーに手をかけた所である。
「は、恥ずかしいよう…」
と顔を赤くし、ブラジャーを外すのを躊躇う観鈴。その可愛げのある動作に、往人のボルテージはますます高まっていった。
「どうした!?とっとと外せよ!!」
「が、がお…」
(ククク…、いたいけな少女のストリップショーをじっくりと眺められるとは…。代打ちをして正解だったな…。そして見終わった後には、俺に代打ちを頼んだおっとりとした少女を…ぶはっ!!ま、また鼻血が…)
「こ、これ以上は脱げないよ〜」
とブラジャーを脱ぎ終わり、パンティー1枚となった観鈴が、必死の目で往人に訴える。
「ククク…、まずは胸を隠している手をどけろ!!」
そう言われ、観鈴は顔を赤くしながら目を瞑り、体を震わせながら恐る恐る胸から手をどける。
「小柄な体の割にはなかなかの大きさだな。さて、次はいよいよ最後の1枚だ!」
「わっ、待って、まだ心の準備が…」
(じれったいな…。ククク…、ここはアレで…)
「わっ、パンティーが勝手に降りるよう〜…。どうして〜!?」
と自然にずり落ちるパンティーを、慌てて必死に押さえ付ける観鈴。実は往人が法術で観鈴のパンティーを降ろしていたのである。
(なかなかしぶといな…。だが、俺の法術に何処まで絶えられるかな…?)
「わっ、ダ、ダメ〜〜!!」
 抵抗空しく、観鈴の腰からパンティーがすり落ちようとした刹那、轟音を立て、何かが雀荘に激突した。
「べ、米軍の奇襲攻撃かっ!?」
とその衝撃に驚き、往人は衝動的に法術を解放した。
「アタタ…」
「あっ、お母さん」
「よう、待たせたな観鈴。代打ちご苦労やった。で、状況はどうや?」
「後1秒遅かったら全裸になっていた所だったよう〜」
「そらぁ、スマンかったな。しかしもう負けているとはな…」
「代打ち…?」
「あははーっ、道理で観鈴さんも手応えがなさ過ぎると思っていましたならば、そう言う事だったですね〜」
「(この女、かなり出来るっ…!)で、観鈴のお母さんとやら、アンタの名前は?」
「ウチか?ウチは神尾晴子(かみおはるこ)ちゅうねん」
「神尾晴子…?と、いう事はひょっとしてアンタ、表の世界じゃ負け無しと謳われている、『関西不敗マスターキンキ』の晴子か!!」
「いかにも、マスターキンキとはウチの事や。で、そういうアンタは何て名前や?」
「俺は国崎往人」
「(…?この男、よく見るとごっつ赤木しげるに似とるな…。もしや…)あんさん、悪いが何処の出身や?」
「今は放浪の身だ」
「その前は?」
「物心付いた時から10歳まで、岩手県紫波町の清寛寺という寺に預けられていた」
「清寛寺…、金光の坊主の寺やな…。ちゅう事は、アンタが噂の赤木しげる似の玄人、『牌の魔術師』やな」
「ククク…、そう言えばそんな名前で呼ばれていたな…」
「成程…。裏の東7強の一人に育てられたモンが相手なら、観鈴が負けても当たり前やな…」
(…もっとも、俺が強いのはそれだけじゃないがな…。母から受け継いだ法術っ!古くは平安の頃から存在していた力ッ!古の時より博打の裏に法術ありっ!)
「…で、勝負はもうついた様子のようやが、ウチを含んで再戦ちゅうのはどうや?」
「俺は構わないが、そこのお二人さんは?」
「佐祐理は構いませんわ。有名な玄人二人のお相手が出来るなら光栄ですわ」
「佐祐理に同じく…」
「よっしゃ、試合開始や!!」
 そう言い終えると、晴子は着ていたジャンバーを脱ぎ捨てT−シャツ1枚になる。
「T−シャツ1枚っ!?しょ、正気かっ!!?」
「ウチは今まで1枚も脱がされた事があらへん。アンタラ程度、T−シャツ1枚で十分や」
「ククッ…、いいだろう。狂気の沙汰程面白い…。だが、その行為をとった事を後悔するんだな…」


「あははーっ、舞〜、明日のお弁当はタコさんウィンナーにしますか〜?(舞…、二の二の天和をやるわよっ!)」
「はちみつくまさん…(了解っ…!)」
 山積みが終わり、佐祐理がサイを振る。出た目は2ッ!
(次は、舞の番よ…)
 そして舞がサイを振る。しかし、出た目は3ッ…!
(そんな…舞がサイ振りに失敗するなんて…)
(ククク…、見え見えの通しなんだよっ!悪いが法術で目を変えさせてもらったっ!!)
「それにしてもこの部屋、ごっつ暑いわ…」
 そう言いながら晴子はT−シャツを扇ぐ。その動作に往人は一瞬目を奪われてしまう。
(む、胸の先端が見える…。ぐへえぼっ!!)
 晴子の悩殺な姿に感化され、往人は滝のような鼻血を流す。
(鳴きが禁止な以上、ヒラで打つしかないわね…)
 そう思いながら、佐祐理が牌を川に置いた刹那っ…、
「ロン。地和、國士無双13面待ち…トリプル役満っ!」
と晴子がロンを宣言した。
「えっ…!?」
 あまりに突然の出来事に佐祐理は言葉を失った。
「ウチの目の前でイカサマやるとはいい度胸や…。これはその挨拶やで〜」
(玄人技の真骨頂…燕返しっ!!そして、麻雀なれした者なら最初にいらないヤオチュウ牌を捨てるという動作を巧みに利用した、國士13面待ちっ!やるなっ、俺が鼻血を流して場から目を離した隙に使うとはっ…)
「という訳で、裸になってもらうで〜」
「あははーっ、地方名産地酒引換券で許してもらえないでしょうか〜?」
「許す!!」
「それにしてもアンタ、さっきの動作は俺の集中力を奪う為にやったのか?」
「そや。それにしても、あれぐらいの動作に目を奪われるとは、あんさんもまだまだガキやな」
「フッ…、俺もまだまだということか…」
 こうして、激闘の刻は終わったっ…。


「ありがとうございます、代打ちを為さって下さいまして…」
「そう言えば名前を聞いていなかったが、何ていう名前なんだ?」
「遠野美凪です…」
「遠野か…。何処となく郷里を思い出させるような名前だな…」
「ではお礼にお米券を…」
「で、遠野さん。この近くに安い旅館かホテルはないか?」
「えっ?ここから直の所にありますが…」
「よし!じゃあ早速行こうか!!」
「??」
「クク…、さて、どうやって手篭めにしてやるかな…?」
「あ、あの…私は『手篭め』ではなく、『お米』と言ったのですが…」
「安心しろ、優しくじっくりといたぶってやるからっ…」
「あの、えっと…、初めてなので優しくして下さい…」

…法術の闘牌編完

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