「まさか、宣伝相が直々にいらっしゃるなんて……」
501の基地にカールスラント本国から予想外の人物が来訪したことに、ミーナは驚きを隠せなかった。
「うむ。事態は急を要する。よって私自らが君たちに命令を下しに来たのだ」
執務室にミーナ、バルクホルン、ハルトマンのカールスラントウィッチ三人を集わせ、重い口を開く男。
彼の名はパウル・ヨハネス・ゲッベルス。カールスラントにおいて宣伝相の要職に就いている男である。
「ほへー。宣伝相が来るなんて。こりゃ一大事だね」
以前宣伝省から宣伝映画の伝達は来たことがあったが、今回はトップ自らの来訪。これは何かあるぞと、ハルトマンは興味津々な顔でゲッベルスを眺めた。
「理由をお聞かせ願えませんか? 何故宣伝相が我々の基地を訪れたのか?」
「ああ。実は皇帝陛下(マイン・カイザー)が酷く気を病んでおられるのだ……」
バルクホルンの質問に、ゲッベルスは鬱然とした顔で、フリードリヒ四世の不調を訴えた。
「皇帝陛下が!? そんな話は一度も!」
「当然だ。このことは皇帝陛下の秘書官や高級士官の一部しか知らぬことだ」
ミーナの驚きに、ゲッベルスは皇帝の心労は極秘事項であることを伝えた。
「秘匿事項か。一体皇帝陛下は何にそんなに悩んでおられのですか?」
「それは、君たちの態度にだよ!」
声を荒げて、ゲッベルスは三人が悩みの原因であることを指摘した。
「えー! わたしたちの部隊はみんなそれなりに実績を挙げているし、皇帝の悩みになることは何一つしてないはずだけど?」
自分自身は度々規律を破ってはいるものの、戦闘自体は皇帝陛下が胸を痛めることなど行っていないはずだと、ハルトマンは訴える。
「そうだ。君らの戦功はあまりあるものだ。ならば、何故その武勲に見合ったものをまったく付けていないのだ!!」
感情が高ぶった声でゲッベルスは憤怒し、自分が501の基地を訪れるに至った経緯を話し始めた。
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