「こんにちはー」
彩の家に遊びに行ってから数日後、誠司は母方の従妹の家を訪れていた。
「いらっしゃいませ、お兄さま。首を長くしてお待ちしておりましたわ」
インターホンを鳴らし軒先で待ち続けていると、ロングヘアでおしとやかな雰囲気の少女が、誠司を出迎えた。
飾り気の少ない黒のキャミソールの上にシルクのブラウスを羽織り、黒目のロングスカートを履いている少女。
その清楚なお嬢様の服装とは不釣合いなチェック柄の大きなリボンが、彼女の可愛らしさを際立たせている。
彼女の名前は霧原沙樹。彼女もまた実の兄がおらず、幼少の頃から誠司を実の兄のように慕っていた。
「お兄さまが来てくださって本当に助かりましたわ」
「携帯でも言ったけど、俺もそんなに勉強は得意じゃないんだけどな」
沙樹は夏休みの宿題がはかどっておらず、宿題を手伝ってもらおうと、誠司を呼びつけたのだった。
「とんでもありませんわ! お兄さまが側にいてくださるだけで、やる気が全然違いますもの。さっ、中にお入りください、お兄さま」
沙樹は爽やかな笑顔を誠司に向け、家の中に案内した。
「相変わらず広いなー、沙樹の家は」
沙樹の父親は大手建設会社の社長を勤めており、その住まいも豪邸といっても差し支えない家だった。
「さっ、ここがわたくしの部屋ですわ。遠慮なくお入りください、お兄さま」
沙樹は自分の部屋に何の抵抗もなく誠司を招き入れた。普通の少女なら自室に異性を引き入れるのには抵抗を示すものだ。故に、誠司を抵抗なく部屋に招き入れた沙樹は、それだけ誠司を信頼しているということなのだろう。
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