一重に従兄弟といっても、父方と母方の従兄弟がいる。当事者にとってはそのどちらも血縁者と言える間柄だ。
 しかし、当事者を挟んだ従兄弟同士は、滅多に顔を合わせる機会がなく、ほとんど赤の他人と言っても過言ではないだろう。
 これはそんな当事者である兄と、二人の従妹の物語である。



第一章〜彩〜


「こんにちはー。遊びに来たぞー」
 その男は夏休みを利用し、父方の従妹の家に遊びに来ていた。男の名は外藤誠司げとうせいじ。誠司には実の兄弟がおらず、幼少の頃から従妹を実の妹のように慕っていた。
「お兄ちゃん、ひっさしぶり〜〜!」
 玄関のドアを開けると、小柄でツインテールの少女が元気良く玄関から飛び出た。
 黒レースのブラウスにチェックのミニスカを履いた少女。髪は黒いリボンで結び、膝上まで履かれた黒ストッキングとスカートの間に展開された絶対領域が、魅惑的な欲情を喚起させる。
 そんな全身を黒に包まれたアダルトな衣装とは対照的な、穢れを知らない無垢な少女の笑顔。
 見た目と服装が噛み合わないだけに、少女の笑みは余計に幼いイメージを与えるものだった。
「ボク、ずっとお兄ちゃんが遊びに来るのを楽しみにしてたんだよ〜〜!!」
 少女は誠司の顔を見るや否や、まるで何年も会っていない人と邂逅したかのような喜びに、クルクルと小躍りしながらぎゅうっと誠司に抱き付いた。
「や、やあ、久し振りだね、あーや。しばらく見ないうちに随分と大きくなったね」
「うん! ボクね、早く大人になりたくって、牛乳いっぱい飲んだんだよ!!」
(大きくなったって言っても、そっちの方じゃないんだけどな……)
誠司は自分に密着している少女の胸元に、よこしまな視線を向ける。少女の胸は決して大きい方じゃない。だが、年相応の大きさに育った胸は、少女がはしゃぐ度にむにゅむにゅとした柔らかい弾力を押し付けてくる。
未だ異性との肉体関係を持ったことのない誠司にとって、それは非常に刺激的で性的興奮を呼び起こす感触だった。
「中に入ってお兄ちゃん! 今日はお父さんもお母さんもいないし、いっぱい、いっぱい遊ぼー!!」
 少女は誠司の腕を引っ張り、天真爛漫な笑顔で家の中へと誘う。少女の名は鴻華彩こうかあや。彩には実の兄がおらず、幼少の頃から誠司を実の兄のように慕っていた。誠司の方も彩のことをあーやと呼び、二人は互いに実の兄妹のように慕い合っていた。



「あーや、今日は何して遊ぶ?」
「うんっとね、うんっとね……お馬さんごっこーー!」
 口元に指を当て、天井を見上げながらうーんと悩んだ後、彩は両手を広げながらはきはきとした声でお馬さんごっこを答えた。
「またか……」
 いつもと変わらない彩の答えに、誠司は少々呆れ気味だった。兄とスキンシップが楽しめるからだろうか、彩は昔からお馬さんごっこが大好きだった。
 幼少の頃こそ乗る気で付き合えていた誠司だったが、年が経つに連れ、成長した彩の身体を支えきれなくなり、いい加減そろそろお馬さんごっこから卒業して欲しいと思っていた。
「……。ほら、乗りな」
 けど、そんな子供の頃の無邪気さを残している彩が決して嫌いなわけではなく、誠司は四つん這いになって彩を誘導した。
「わぁい! ありがと、お兄ちゃん!!」
 彩は元気いっぱいに喜びながら、背中越しに誠司に抱き付いた。
「えへへ。お兄ちゃん、だーい好き!」
 彩は嬉しい気持ちを前面に出しながらにははと笑い、猫がじゃれるようにすりすりと誠司に密着する。
(うぐっ! また、胸が……)
 まるで脊髄に直接刺激を与えるように伝わる、柔らかい二つの胸の弾力。それに加え顔にかかる彩の髪からは心地良いシャンプーの匂いが漂い、誠司の下半身には血液が収束し始める。
「それじゃー、レッツゴー! しゅっぱ〜〜つ!!」
 思う存分兄とのスキンシップを楽しむと、彩は誠司の背中に腰掛けた。そして、左手でシャツの襟を掴みながら、健康的な笑顔で右手をグーの字で天に掲げるのだった。
「じゃあ動くぞ」
 それが合図となり、誠司はゆっくりと動き始めた。
「行け! 行け! ゴー! ゴー! ゴーー!! 荒野の果てまで突っ走れーー!!」
 誠司が動き始めると、彩はまるでジョッキーにでもなったかのように元気良くはしゃぎ回る。
(ぐうっ! やっぱり重い……)
 いざ動いてみた誠司だったが、第一次性徴期を終えた彩の身体は思ったより重く、その足取りは鈍牛のようにゆっくりだった。
「どうしたの、お兄ちゃん! もっと元気よく動いてよーー」
 せっかく元気良く手綱を切ったのに、肝心の誠司が全然動いてくれない。
彩は調教師のように結った髪で誠司のお尻をぺしぺしと叩きながら、誠司を無理矢理にでも走らせようとする。
「そ、そうは言われても……」
「ぶーぶー、つまんないよー! お兄ちゃんが動いてくれなきゃつまんな〜〜い! もっと激しくいっぱい動いてよ、お兄ちゃん!!」
 彩は不満げな声で叫びながら、駄々をこねるように腰をグリグリと動かした。
(うっ、うおっ! こ、これは……)
 彩が背中で動く度に、パンティー越しに柔らかい秘部の温もりが伝わってくる。ぷにぷにとした心地良い感触に、誠司は彩が自分を誘っているのではないかとの錯覚を起こすほどであった。
(……。もう少し頑張ってみるか)
 このままお馬さんごっこを続ければ、この感触をずっと味わえるはず。性的な欲求に心を満たされた誠司は、彩の期待に応えるという意味も含めながら、お馬さんごっこを続ける決意をした。
「わー! スゴイスゴイ! お兄ちゃん、ホントのお馬さんみたいーー!!」
 性的興奮に支配された誠司は、少しでもこの状態を維持しようと、懸命にお馬さんごっこを続ける。
「ハイヨー、お兄ちゃん! ハイヨー!!」
 誠司に釣られるように彩も興奮度を高め、ゆっさゆっさと激しく身体を動かして乗馬気分を味わう。
(ぐうっ! たまらん……)
 彩の重みよりも擦れ合う秘部の刺激が増し、誠司の性的欲求はますます高まっていく。
(もっ、もう駄目だ……!)
 しかし、とうとう彩の重みに耐えられなくなった誠司はガクッと両腕を曲げ、大きくバランスを崩してしまう。
「わっ、わああー!?」
 突然の出来事に対処できず、彩はそのまま誠司の背中に張り付くように倒れてしまう。
「もうっ! しっかりしてよお兄ちゃん!!」
 せっかく楽しんでいたのに気分を害されてしまい、彩はぷくーっと顔を膨らまし不満を露にした。
「すまん、すまん。もう身体が持たない。これ以上は続けられないよ」
「えー!? そんなのヤダよぉー! もっといっぱいお兄ちゃんとお馬さんごっこしたいよーー!!」
 彩は誠司の背中でジタバタと暴れ回りながら駄々をこねる。その度に柔らかい彩の身体の温もりが伝わり、誠司の性的興奮は否応なく高ぶっていく。
「しょうがないないなぁ。それじゃあ“大人のお馬さんごっこ”でもするか?」
「ふえっ!? 大人のお馬さんごっこって?」
 普通のお馬さんごっこと何が違うんだろうと、彩はキョトンとした。
「こういうことだよ!」
「えっ!? わっ! きゃあっ!!」
 誠司は力いっぱい背中に負ぶさった彩をゴロリと床に退け、そのまま彩の上に負ぶさった。
「お、お兄ちゃん?」
 大好きな誠司の顔が自分の目の前に迫り、彩は胸のドキドキが止まらなくなる。
「あーや、しばらく見ないうちにずいぶんと大きくなったね……」
 そう言い、誠司は服越しに彩の胸を揉む。
「んっ……やぁぁ……お兄ちゃん、何するのぉ……」
 決して大きくはないが、形が良く揉み応えのある胸に指が浸透する。もにゅもにゅと鷲掴みされながら揉まれ続け、彩は困惑めいた吐息を漏らす。
「大人のお馬さんごっこをするにはこうしなくちゃならないんだよ」
「や、ヤダよぉ、こんなのぉ……。だってこれじゃあ……」
「これじゃあ何?」
「えっ!? そ、それは……」
 誠司が続きを訊こうとすると、彩は顔を真っ赤にして視線を逸らしてしまう。
「あーや、学校の授業で習わなかったかい? 大人のお馬さんごっこの遊び方」
「えっ? そ、そんなの習ってないよ」
「本当に? 彩の年くらいじゃもう習っているはずだけど?」
「……」
 彩は直感的に大人のお馬さんごっこの意味を悟り、頬を赤く染めながら困ったような顔で沈黙を続けた。
「あーや、お兄ちゃんと大人のお馬さんごっこするの嫌?」
「それはその……」
「お兄ちゃんはあーやと大人のお馬さんごっこしたいんだけどなー」
 そう不敵な笑みを浮かべ、誠司は彩の服に手を入れる。
「んっ……はぁっ……! やぁん……お兄ちゃん……」
 直に乳首を親指と人差し指でグリグリと弄られ、彩は甘美な声を漏らした。
「やだ? 気持ち良くないの、彩?」
 誠司は嫌がらせをするように、彩の乳首に刺激を送り続ける。親指でクニクニと乳房に押し込んだり、左右にコリコリと回したりしながら刺激を与え続ける。
「んん……あぁ……やんっ……! な、何だかだんだん気持ちよくなってきたよぅ……」
 執拗な乳首への攻めが続き、彩の顔は次第に興奮に塗れていった。
「それは良かった。でも、大人のお馬さんごっこをすれば、もっともっと気持ち良くなるよ?」
「んあっ……んんっ……あぁん……」
「もっと気持ち良くなりたくない? あーや」
「あぁ……んっ……あぅあ……。き、気持ちよくなりたいよ、なりたいよぉ、お兄ちゃん……!」
「ならお兄ちゃんと大人のお馬さんごっこするかい?」
「うっ、うんっ……するっ、お兄ちゃんと大人のお馬さんごっこする!」
 とうとう彩は折れ、すっかりと頬が火照った顔で大人のお馬さんごっこがしたいと自ら漏らした。
「本当にいいのかい?」
「うん……。ボク、お兄ちゃんが初めての相手なら構わないよ……」
 遠回しに大人のお馬さんごっこの意味を理解していることを伝えつつ、彩ははにかんだ笑顔で誠司に答えた。
「ありがとう、あーや」
「でもその前に」
「その前に?」
「キスして、お兄ちゃん。普通はお馬さんごっこの前にキスするはずだから……」
「お安い御用だよ」
と、誠司は徐に彩の唇に自分の唇を合わせる。
「んむっ……んっ……」
 彩は目を瞑り、舌を絡めながらのキスを続けた。



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