「お、真琴、どこ行くんだ?」
 秋子さんにおつかいを頼まれて商店街に向かってたら、あっちの方から祐一が歩いてきた。
「おつかい。お豆腐買いに行くの」
「そうか。一人で買えるか?」
「子供じゃないんだから、買えるっ!」
「どう見たって子供じゃないか、お前」
「大人よっ!」
 あたしはムカついて祐一に思いっきり大きな声で言いかえしてやった。もうっ、祐一ったらいっつも真琴の気に障ることばかり言うんだから!
「そうか?」
「そうっ!」
「じゃあ、俺のエロゲーも頼む」



エロゲーを買いに逝こう!


「えろげー?」
 聞きなれない言葉に、あたしは思わずきょとんとした。
「知らないのか、エロゲーを」
「ゲームなら聞いたことあるけど……。どんなゲーム?面白い?」
「面白いというか、興奮するな。ピタッと指が触れる度アレが疼いて、思わずキラブリッジをしたくなる。『アスラン=ザラ、ジャスティス射精する!!』っていう感じに」
「よく分からないけど、買ってきていいの?」
「そうだな。金渡すよ」
 そう言って祐一は財布からお金を取り出した。
「ほい、一万円」
「? なにこれ?」
 見なれないお金にあたしは思わずきょとんとした。
「知らないのか?日本で一番価値のある福沢諭吉っていう偉人さんが書かれたお札だぞ」
「いじんさんって?」
 またまた聞きなれない言葉に、あたしはきょとんとした。
「赤い靴履いた女の子を麻袋に詰めて拉致する北の工作員だ。釣り眼でエラが張っていてウリナラマンセー言ってるとっても怖い人だぞ」
「わっ、なんでそんな怖い人が書かれているの?」
「北の将軍様はとっても偉い人(北限定)だからお札に書かれて当然なんだよ」
「?」
 怖いけど偉いからお札に書かれて当然?あたしには祐一の言ってることがさっぱり分からなかった。
「ま、それは置いといて。エロゲーは普通のゲーム屋では売ってなくて、電荷製品店で売っている。絵が描かれていて大人しか買えないっていうシールが貼ってあるからすぐに見つかる」
「うん。真琴もやっていいの?」
「お前が大人だったならな。
 もっとも、お子ちゃまなマコピーはやった瞬間子宮癌にかかるかもしれない。ウェー、ハッハッハ!!」
「な、なにようっ!真琴大人よ!ぜったいやってみせるんだから!!」
 あたしは怒りながら祐一と別れて商店街に向った。
「あっ、言っておくがお釣りを勝手に使うんじゃないぞ。もし使ったことが発覚したら麻袋に詰めて北に強制連行するからな!」



「ええと、電荷製品店、電荷製品店……」
 秋子さんに頼まれた買い物を終わらせてから、あたしは電荷製品店を探した。
「あうーっ、電荷製品店ってどこ〜〜?」
 あうーっ、全然見つからない……。それに電荷製品店ってエロゲー以外何売ってる所なの〜〜。
「あははーっ、どうかしたんですか〜〜」
「あぅ?」
 あたしが困ってると、大きなリボンで髪の長い綺麗なお姉さんが声をかけてきた。
「えっと、電荷製品店探してるの」
「あははーっ、それは奇遇ですね〜。佐祐理もこれから向おうと思っていた所なんですよ〜。宜しければ佐祐理と一緒に行きます?」
「うん!どうもありがと」
 こうしてあたしは佐祐理さんっていうお姉さんに電荷製品店に連れて行ってもらうことになった。



「ふ〜ん、真琴ちゃんっていう名前なんですね」
「うん、沢渡真琴って言うのよ」
「いい名前ですね〜」
「うん。真琴も気に入ってる名前なの」
 そんな会話をしながら佐祐理さんに連れられて電荷製品店に向かっていた。
「はい。着きましたよ」
 話をしていたら、いつのまにか電荷製品店に着いた。
「わぁ……」
 店の中に入ると見たことないものばかりがいっぱい並んでて、あたしはビックリした。
「あうーっ、こんなに色々売ってるんじゃ、どこにあるかわかんないわよぅ」
 祐一はすぐ見つかるって言ったけど、こんなんじゃ日が暮れても見つかんないわよぅ。
「真琴ちゃん、良かったら佐祐理も一緒に探すの手伝いますよ」
「あうーっ、ありがと!」
 う〜ん、佐祐理さんってホントに優しいお姉さんね。祐一なんかとは大違い。
「それで何を買うんです?」
「うんっとね、エロゲー!」
「ふぇ?エロゲー……ですか?」
「うん、エロゲー!それ買えれば大人だって言われたから。真琴、大人だから買えるのよ」
「はぇ〜……。確かに大人が買う物ですが、女の子が買う物では……」
「あぅ?とにかく買って真琴が大人だって証明して見せるのよ!」
「はぇ、仕方ありません。どうしてもというならPCゲームコーナーに案内しますね……」
「うんっ。どうもありがと佐祐理さん!」



「ええとっ、真琴ちゃん……。エロゲーはそこに並んでるゲームを指すのですが……」
「ふ〜ん、どれどれ……」
 佐祐理さんに案内されて、あたしはエロゲーコーナーにやってきた。
「なっ、なによこれっ!」
 裸の女の人があんなことやこんなことされてる箱があたしの目に映った。祐一、あたしにこんな恥ずかしいもの買わせようとしたのね〜〜!!
「分かりましたか?エロゲーは女の子が買うにはちょっと……」
「あうーっ!でも買わなきゃ真琴の腹の虫がおさまんないわよぅ!!」
 真琴が大人だってこと証明したいし、何より祐一に仕返ししたい!でも女の人の裸が描かれてるのはちょっと……。
「ん?」
 そんな時、あるゲームがあたしの目に止まった。
「ねえ、佐祐理さん。このゲームもエロゲーっていうの?」
「ふぇ?……はい、確かにこれもエロゲーですね。他のとは大分趣向が違いますけど……」
「決〜めた!このエロゲー買おうっと!!」
「はぇ、でも真琴ちゃんはどう見ても18歳以上に見えませんし、買うのはちょっと難しいかと……」
「あうーっ、佐祐理さんまで真琴を子供扱いするの!」
「はぇ〜〜……。仕方ありません、この店はお父様のお知り合いが経営している店ですから、店員さんを何とか説得してみますね……」
「あうーっ、何から何までどうもありがとう〜〜」
 こうしてあたしは佐祐理さんの協力でエロゲーを買うことが出来た。
 ふふっ、見てなさいよ、祐一!



「祐一、買って来たよ〜」
「……へ?」
 スキップしながら祐一の部屋に向かうと、祐一はきょとんとした。その顔だとあたしがエロゲーなんて買ってくるハズないって思ってたわね。
「だから、買って来たわよ、エロゲー」
 そう言ってあたしは祐一に買って来たエロゲーとお釣りを渡した。
「冗談だろ?お子ちゃまなマコピーがエロゲーなんて……」
「ガサゴソッ……」
「…………」
 半信半疑で袋の中を空けると、祐一は暫く黙りこんだ。
「ねっ、ちゃんと買って来たでしょ、エロゲー」
「……。ああ……確かにこれはエロゲーだ……。
 ……けどなぁ……


 『炎多留』なんて買ってくんじゃねぇ〜〜!!

 強姦するぞ、このアマぁ!!」
「なによぅ、ちゃんとエロゲー買って来たじゃない」
「五月蝿い!誰がこんな『ウホッ!いい男…』なゲームを好き好んでやるか!俺のなけなしの金をこんなのに使いやがって!
 マコピーに謝罪と賠償を要求するニダ!!」
「真琴に恥かかせようとした罰よ。祐一なんて一生そのゲームやってればいいのよ!」
「この代償はお前の身体で返してもらうぞ!レイプして殺してもう一回死体を犯してやる!!」
 そう言って祐一はいきなりあたしを押し倒した。
「わっ、な、なにするのよぅ!」
「だからお前の身体で返してもらうんだよ!俺の成り成りて成り余れる所を、お前の成り成りて成り合わぬ所に挿入すいれるんだよ!!」
「あっ、やだっ、ちょっと、やめてよ〜〜!あうーっ!!」


エロゲーは18歳になってから(笑)。

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